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HALL OF FAME REVIEW

イース フェルガナの誓い

横スクロールだったイースIIIを、別物の手触りで遊ばせる。音楽とボス戦が強いフェルガナ


イース フェルガナの誓い のパッケージ
Orege 92
METASCORE
80
IGN
発売日
2005年6月30日(木)
ジャンル
アクションRPG
対応機種
PC / PlayStation Portable / Nintendo Switch / PlayStation 4 / PlayStation 5

『イース -フェルガナの誓い-』は、古い作品を忠実に保存するタイプのリメイクではない。原作『イースIII -Wanderers from Ys-』の横スクロールを離れ、見下ろし型のアクションRPGとして作り直した。視点も操作も変えながら、アドルとドギがフェルガナを訪れる物語、土地に残る悲劇、何より音楽の勢いを引き継いでいる。Oregeが92点を付けるのは、原作の形より、遊んだときに残る熱を選んだリメイクだからだ。PC版は2005年に発売された。若い冒険家アドル・クリスティンは相棒ドギと旅を続ける中で、ドギの故郷フェルガナ地方に不穏な噂があることを知る。火山活動、魔獣の出現、領主の圧政。二人は現地へ向かい、レドモントの町を拠点に異変を追う。物語は一つの地方へ絞られ、世界全体を巡る大作ではない。町からダンジョンへ出て、戻って人々の話を聞き、また次の場所へ向かう。この規模がゲームの速さに合っている。長い導入で人物と制度を説明せず、到着して間もなく剣を振るうことになる。移動範囲が広がるたびに、町の住人が少しずつ状況を話す。アドルは多弁な主人公ではなく、自分の感情を長い台詞で説明しない。プレイヤーが操作して危険な場所へ入り、戻ったときの変化を見ることで、冒険家としての役割が分かる。基本操作は移動、攻撃、ジャンプを中心にしている。剣を振るとすぐにアドルが反応し、敵へ近づいて連続攻撃を入れ、危なくなれば距離を取る。敵を倒すたびに立ち止まってコマンドを選ぶのではなく、地形を走りながら戦闘が続く。雑魚戦はテンポよく終わり、探索の流れを切らない。操作の反応が速いため、うまく避けられたときも、被弾したときも原因が分かりやすい。

三つの腕輪は戦闘と探索の両方に使う。焔は離れた敵への攻撃、風は回転する力と空中での移動、地は防御と重い一撃に関わる。新しい腕輪を得ると、以前は届かなかった場所や壊せなかった物へ手が届く。鍵を入手して扉を開けるだけでなく、アドル自身の動きが増えることで地図の見え方が変わる。ジャンプがあることも大きい。見下ろし型のアクションRPGでありながら、高低差のある足場を渡り、動く床へ着地し、攻撃を避ける。原作の横スクロールにあった跳ぶ感覚を、視点の違うゲームへ持ち込んでいる。距離を見誤って落ちる場面もあり、純粋な戦闘だけを期待すると難しく感じるかもしれない。それでも、ダンジョンを平面の通路にしない役割を果たす。探索の気持ちよさは、移動速度にも支えられている。アドルは軽快に走り、敵を倒した勢いのまま次の部屋へ入れる。経験値やアイテムを拾うために長く足を止めない。ダンジョンには仕掛けがあるが、解法を知ったあとまでゆっくり歩かせることは少ない。繰り返し通る場所でも、操作の速さが負担を減らす。本作を代表するのはボス戦だ。大きな敵の攻撃範囲を見て、跳び、走り、隙へ攻撃を入れる。最初は画面を埋める攻撃に圧倒されても、何度か戦うと安全な位置と反撃の時間が見えてくる。レベルを上げれば楽にはなるが、最後は動きを覚えて操作する必要がある。数字だけで押し切らせず、アクションとして決着させる。難易度は低くない。とくに高い設定では、一度の判断ミスが大きな損失になる。公式のサポート情報でも、最高難度では敵の攻撃力が非常に高いことが案内されている。ただ、攻撃の予兆と失敗の理由は読み取りやすい。理不尽に見えた技も、避ける順番が分かると対応できる。再挑戦を重ねるうちに、敵の体力ではなく自分の理解が進んでいることに気づく。この学習を支えるのが再挑戦の軽さだ。敗北のあと、長い会話や道中を毎回やり直す作りなら、ボスの難しさより待ち時間が記憶に残る。本作はもう一度戦うまでが早い。失敗直後の感覚を保ったまま、次の一手を試せる。難しさを売りにするゲームほど、やり直しの設計が重要だということを分かっている。

成長要素はあるが、項目を増やしすぎない。レベルを上げ、武器や防具を整え、腕輪を強化する。町で準備してダンジョンへ向かう流れが明確で、複雑なスキルツリーを読み込む必要はない。装備を更新したときの効果も分かりやすい。キャラクター構築の自由度より、アドルを動かす技術へ比重を置いている。そのため、戦闘前の編成を延々と考えたい人には物足りないかもしれない。武器の特殊効果を組み合わせ、多数の仲間を使い分けるRPGではない。操作できる主人公はアドルで、解決方法も剣と腕輪に集約される。選択肢を減らしたぶん、ボスの動きと地形を読むことに集中できる。何を面白さの中心に置くかがはっきりしている。物語では、ドギの故郷という設定が効いている。アドルにとっては新しい冒険の土地でも、ドギには知り合いと過去がある。レドモントの人々、エレナ、チェスター、バレスタイン城をめぐる関係が、土地の異変と結びつく。世界を救う規模へ話が広がっても、始まりは故郷へ帰ってきた友人の心配だ。人物の数を絞ることで、誰が何を失ったのかを追いやすい。一方、現代の長編RPGと比べれば、人物の描写は簡潔だ。会話イベントは必要なところへ集中し、仲間と何十時間も交流する作りではない。展開が早いぶん、もっと日常を見たいと思う人物もいる。後発の『イースVIII』など、仲間との生活を長く描く作品から入った人には、物語がまっすぐすぎると感じられるだろう。それでもドラマが薄くならないのは、音楽が場面を運ぶからだ。PC版サウンドトラックは全33曲で、原作『Wanderers from Ys』の曲を土台にしたものも多い。「翼を持った少年」「バレスタイン城」など、移動や戦闘の速度を押し上げる曲が揃う。曲が始まるだけで先へ走りたくなり、ボス戦では攻撃の激しさと同時に気持ちまで上がる。ゲーム音楽を背景として控えめに置く作品もあるが、本作は前へ出す。旋律が強く、場面を離れても曲だけ覚えているほどだ。通常なら派手すぎるアレンジでも、アドルの速い移動と大きなボスには合う。戦闘が終わったあとまで耳に残り、次の挑戦へ戻る勢いを作る。音楽がよいという感想で終わらず、リトライを支えるゲーム機能になっている。

原作からの変更を考えると、この音楽の扱いがリメイクの方針をよく表している。横スクロールの画面をそのまま高精細にするのではなく、曲が持つ速さや冒険感に合うアクションを新しく作る。物語と曲を核にして、操作は当時の別作品『イースVI』以降の見下ろし型へ組み直した。原作の見た目を守ることより、いま動かして面白い形を選んだ。移植版や『イース・メモワール』では、機種に合わせた調整が加わっている。PSP版ではイベントのフルボイス化や複数の音源を切り替えるサウンドモードが用意され、近年版も現行機で遊びやすく整えられた。どの版を選ぶかで映像や補助機能には違いがあるが、速い戦闘、腕輪を使う探索、ボス戦という核は変わらない。今遊ぶと、カメラが固定される場所やジャンプの距離感に古さを感じることはある。狭い足場で落下を繰り返すと、戦闘ほど素直ではないと思う場面もある。ダンジョン内の目的が分かりにくく、同じ場所を回ることもある。殿堂入りだからといって、20年前の設計がすべて快適になったわけではない。それでも本作は、余分な待ち時間と複雑さが少ない。町で準備し、ダンジョンを走り、ボスに負け、動きを覚えて勝つ。この流れが短い間隔で繰り返される。一本のRPGを大きく見せるために要素を足すのではなく、剣を振る瞬間の反応を磨く。短くまとまっていることが、物足りなさより密度として働いている。Oregeで勧めたいのは、自分の操作が上達するRPGを探している人だ。強い装備を集めるだけでなく、昨日避けられなかった攻撃を今日は越えたい人に合う。逆に、自由なビルドや仲間との長い会話を求めるなら、別のイース作品のほうが向いている可能性がある。難しいアクションが苦手なら、無理に高難度を選ぶ必要もない。『フェルガナの誓い』は、リメイクにとって何を残すべきかを具体的に示している。横から見た画面ではなく、アドルが冒険へ飛び込む速さ。昔の操作ではなく、ボスへ何度も挑みたくなる手応え。そして、フェルガナへ足を踏み入れた瞬間に流れる曲だ。原作と同じ形ではないからこそ、原作を知らない人にも一本のアクションRPGとして通じる。剣を振り、曲に押されて次の部屋へ走る。その勢いが、発売から時間を経ても衰えていない。