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HALL OF FAME REVIEW

Street Fighter 6

対戦格闘の開祖が、自分で切り開いたジャンルをもう一度前へ進めた。入口の広さと勝負の深さを両立した『スト6』


Street Fighter 6 のパッケージ
Orege 98
METASCORE
92
IGN
9
発売日
2023年6月2日(金)
ジャンル
対戦格闘
対応機種
PlayStation 5 / PlayStation 4 / Xbox Series X|S / PC / Nintendo Switch 2

『Street Fighter 6』で起きたのは、対戦格闘ゲームの王者であり開祖でもあるシリーズが、自ら切り開いたジャンルをもう一度進化させるという出来事だ。Oregeの98点はそこに尽きる。長く続いたシリーズの新作は、往年の型を磨くだけでも商品になる。まして『ストリートファイターII』以降、対戦格闘の基準を作ってきた名前なら、変えるほど失うものも大きい。それでも『6』は、古くからのプレイヤーが読み合いを掘り続けられる対戦を保ちながら、初めて触る人が技を出し、勝負へ参加するまでの距離を縮めた。ここでいう進化は、派手な新技や登場人物の数ではない。ゲームセンターで対面し、家庭用機で隣に座り、やがてオンラインで世界中の相手と戦うようになったジャンルを、現在の遊ばれ方に合わせて組み直したことだ。中心にあるのは、互いの体力を削り切る一対一の勝負である。距離を測り、相手の癖を読み、攻撃するか待つかを決める。数秒の判断が勝敗へ返る厳しさは変わらない。その一方で、操作方法、練習、物語、交流の入口を分け、対戦台へ座る前にも居場所を作った。強い人だけを残すのではなく、これから強くなりたい人をゲーム全体で迎える。それをシリーズの本道として実行した点が大きい。初心者向け要素を別枠のおまけにせず、競技性の高い本戦と同じ製品の中心へ置いている。初期キャラクターには、リュウや春麗のようなシリーズの顔と、新しい世代のファイターが同じ舞台に立つ。古い技を知っている人には変化があり、知らない人には説明なしで役割が伝わる。懐かしさを入口の条件にせず、積み重ねは技の動きや人物同士の関係へ残す。この新旧の扱いも、シリーズを続けるための設計になっている。

対戦の核になるドライブシステムは、攻撃と防御を一つのゲージで管理する。相手の攻撃を受け止めるドライブパリィ、相手の構えを崩しやすいドライブインパクト、技を強化するオーバードライブ、動きを一気に前へ運ぶドライブラッシュ。使える行動は多いが、支払う資源は同じだ。攻めを続けてゲージを使い切ればバーンアウトし、防御の選択肢が狭くなる。温存すれば安全だが、相手へ主導権を渡すかもしれない。従来のシリーズで別々に存在したような判断を、一試合の最初から共通の財布で考えさせる。これが試合を見ても動かしても分かりやすい。画面の色と音が大きく変わるドライブインパクトは、初心者でも成功を実感しやすい一方、読まれれば反撃される。ドライブラッシュは攻めを継続する力が強いが、無計画に使えば後半が苦しくなる。強い行動を隠さず全員に渡し、その使いどころで差が出る設計だ。キャラクターごとの通常技、必殺技、間合いははっきり違い、同じゲージを使っても試合の組み立ては変わる。リュウのように飛び道具と対空で相手を動かすか、ザンギエフで接近の圧力をかけるか。共通ルールが個性を平らにせず、違いを理解する土台になっている。負けたときも、技が出なかったのか、ゲージを使いすぎたのか、相手の選択を読めなかったのかを切り分けやすい。反省点が見えるから、もう一戦が練習になる。対戦格闘の深さを減らさず、考える順番を整理したシステムだ。さらに、スーパーアーツはドライブゲージと別に蓄積するため、ラウンド後半には体力、二つの資源、相手の行動を同時に読む局面が生まれる。使える手が増えても、画面上の情報は色と演出で判別しやすい。観戦する側にも、どちらが無理をして攻めているか、バーンアウト中の守りがどれほど苦しいかが伝わる。競技として見られるゲームであることまで、システムの見せ方に含めている。

入口を広げた象徴がモダン操作である。複雑なコマンド入力を省き、方向とボタンの組み合わせで必殺技を出せる。入力の難しさを越えてから読み合いが始まるのではなく、最初から相手を見るところへ参加できる。使える技や威力にはクラシック操作との違いがあるため、完全な自動運転ではない。どちらを選ぶかも戦い方の一部になり、モダン操作のまま高い段階を目指せる。対戦格闘に慣れた人が、初心者用だからと切り捨てられないところまで作り込んだ判断は大きい。Fighting Groundにはアーケード、トレーニング、対戦など従来の遊びが揃う。練習機能は、連続技を覚えるだけでなく、状況を再現して答えを試す場所として使える。オンライン対戦へ行く前には、一人用のWorld Tourがある。自分のアバターを作り、街を歩き、シリーズのファイターたちから技を学ぶ。格闘ゲームの仕組みをRPGの成長へ置き換え、技を覚えることに物語上の理由を与えた。仕上がりに粗い部分はあるものの、対戦だけでは伝わりにくい「強くなる過程」を遊べる。Battle Hubは、同じ場所に集まったプレイヤーが対戦台へ座るゲームセンターの感覚をオンラインに持ち込む。すぐランク戦へ入るだけでなく、人が戦う様子を見たり、アバターで歩いたりできる。三つのモードが、練習、一人遊び、交流、競技を別々の入口から同じ対戦へつないでいる。自動実況も、対戦格闘を観戦する文化をゲーム内へ持ち込む試みだ。状況を言葉で拾ってくれるため、何が起きたか分からないまま試合が終わる感覚を減らせる。細かな機能の多くが、まず遊べと突き放すのではなく、見る、試す、理解するという段階を用意している。上達を保証はしないが、上達するための場所は見つけやすい。

長く運営される対戦ゲームなので、評価には留保もある。追加キャラクターや衣装には購入が必要なものがあり、遊びたい相手や見た目を揃えようとすると本体価格だけでは終わらない。World Tourは対戦への導入として面白いが、移動や雑魚戦の繰り返しまで格闘ゲーム本編と同じ密度ではない。Battle Hubの賑やかさも、純粋に一対一の試合だけを続けたい人には遠回りになる。モダン操作で技を出せても、勝ち続けるには間合い、対空、確定反撃を覚える必要がある。入口が広いことと、頂上まで簡単であることは別だ。それでも、負けた人をゲームの外へ追い出さない工夫が各所にある。段階の近い相手と戦い、練習機能で状況を再現し、一人用モードへ戻って操作を確かめられる。対戦格闘は相手が必要なジャンルだから、新しい人が入れず、経験者だけが残れば先細る。『Street Fighter 6』はその問題に、薄い初心者モードではなく、操作体系と製品全体の構成で答えた。同時に、ドライブゲージという一つの資源から毎試合ちがう攻防を生み、長く遊ぶ人へ研究の余地を渡している。守るべき読み合いを守り、参入を阻んでいた部分は変える。開祖が自分の作った型を博物館へ入れず、現在のプレイヤーが触れる形へ更新した。格闘ゲームに興味はあるが、コマンド入力やオンライン対戦が怖くて離れていたなら、本作は改めて対戦台へ座る機会になる。そこで待つのは簡単な勝利ではない。自分の判断で一ラウンドを取れたと分かる、昔から変わらない気持ちよさである。勝敗がはっきり出るゲームだからこそ、相手の強さだけを敗因にせず、自分が次に直す一点を見つけられることが大切だ。本作はその一点へ戻る道を、トレーニング、リプレイ、操作選択、一人用モードの各所に置いた。開祖の仕事は昔の正解を守ることではなく、もう一度ジャンルの基準を作ることだった。その役割を『6』は引き受けている。