『Rance X -決戦-』をOregeで扱うには、最初に言っておくべきことがある。成人向け作品であり、性暴力を含む強い表現がある。主人公ランスの言動も、現在の感覚で簡単に肯定できるものではない。万人へ勧められるゲームではなく、合わない人がいるという程度の軽い注意では済まない。それでも100点を付け、殿堂入りへ置くのは、その扱いにくさを伏せてもなお、長いシリーズをゲームとして終わらせた仕事を評価したいからだ。ランスシリーズの第1作は1989年に登場し、『Rance X』は2018年に発売された。約30年の間、同じ世界と人物の歴史を積み上げてきたシリーズの完結編に当たる。作品ごとにRPG、地域制圧、育成など仕組みを変えながら続いてきたため、最後に必要だったのは過去の出来事を順番に振り返るだけの同窓会ではない。多数の国と人物が同じ危機へ関わり、プレイヤーの判断によって戦況が変わるゲームでなければ、このシリーズらしい終幕にはならなかった。物語は人類軍と魔物軍の全面戦争を扱う。ランスは全人類の総統となり、人類軍を指揮しながら、自らは独立遊撃部隊「魔人討伐隊」を率いる。言葉だけなら英雄の役目だが、本人が立派な指導者へ生まれ変わるわけではない。欲望で動き、横暴で、周囲を困らせる。その人物を中心にしながら、各国の指導者や兵士が現実的な被害へ対応する。このずれが、ランスシリーズの調子を保つ。ゲームはターン制で進み、一つのターンに準備、作戦、拠点などのフェイズがある。各地を支援するか、魔人を討伐するか、訓練や探索へ時間を使うか。選べるクエストは複数あるが、一度に全部は実行できない。ある国を救うための行動を選べば、別の地域へ手が回らない。物語上の「世界が危ない」が背景の台詞ではなく、選ばなかった行動の結果として現れる。戦争全体と、目の前のクエストの距離がうまい。大局だけを地図で管理すると人物が数字になり、個別の冒険だけを追うと戦争の広さが消える。本作は、ターンの選択で国ごとの状況を見せ、クエストでは魔人討伐隊の会話と戦闘へ寄る。プレイヤーは司令官の判断をした直後に、少人数の部隊として危険な場所へ入る。視点を往復することで、救えた人数と、そこで会った一人の両方を覚えられる。
部隊編成では、最大7つのチームを配置する。公式システム紹介では、主人公、リーザス、ヘルマン、ゼス、自由都市、JAPAN、亜人、モンスター、神魔など10の所属が示されている。各チームのリーダーを選び、全体HPと攻撃力、使える技能を組み合わせる。強いキャラクターを一人並べれば終わりではなく、所属する仲間の総数もチームの戦力へ影響する。集めた人物が控えにいても、部隊の底上げになる。キャラクターはカードとして扱われ、クエスト中の宝箱では原則として提示された3枚から1枚を選ぶ。同じ人物でも別のカードがあり、再入手による強化もある。誰が出るかにはランダム性があり、毎回同じ編成にはならない。シリーズで知っている人物を優先するか、今の戦況で必要な能力を取るか。宝箱を開けるたびに、思い入れと実利がぶつかる。カード収集という言葉から、課金型ゲームのような仕組みを想像するかもしれない。しかし本作では、カードは一本のゲーム内で戦力と物語を結ぶために使われる。仲間が増えれば所属チームが強くなり、リーダーにすれば戦闘で技能を使える。食券を手に入れると、その人物の短いエピソードを見ながら経験値を与えられる。数百人規模の登場人物を、名簿に置いたままにしないための仕組みだ。戦闘では部隊全体で共有するAPを使い、各チームが行動する。大きな技は強いが消費も重い。敵の次の行動を見て、攻撃を急ぐか、妨害や防御へ回すかを決める。手持ちの組み合わせによって有効な順番が変わり、同じ敵でも編成が違えば解き方が変わる。クエストの前に考え、戦闘中に予定を修正する余地がある。部隊ランクも大切だ。勲章を集めてランクを上げると、配置枠やチーム、各種ボーナスを選んで開放できる。ボーナスは選び直せるため、その時点の課題に合わせて部隊の形を変えられる。恒久的な選択で失敗を恐れさせるより、戦況を読んで構成することへ意識を向けている。世界規模の戦争を扱いながら、プレイヤーが触るのは具体的な編成と一ターンの判断だ。この仕組みは簡単ではない。初回からすべての国を理想的に救おうとすると、情報量に押される。クエストの優先順位、戦果、部隊強化、キャラクター入手が重なり、見えている選択の意味をすぐには判断できない。周回を前提とする要素もあり、一度で全体を見る作りではない。長い作品を最後まで進めるうえで、この繰り返しを負担と感じる人はいるだろう。
ただし、本作の周回は同じ文章を読むだけのやり直しではない。前回は間に合わなかった地域へ向かい、別の人物を部隊へ入れ、異なる条件を満たす。プレイヤーが戦争の仕組みを理解したぶん、次の周回では救える範囲が広がる。物語上のランスたちが強くなるだけでなく、プレイヤーの判断そのものが改善する。長いシリーズの最終作に、簡単な一本道ではなく、理解を積み上げる構造を選んだ。魔人側の描き方も戦争の緊張を支えている。敵が強いと説明されるだけでなく、各国が受ける被害と、戦闘での能力によって怖さが分かる。人類側にも、過去作で国を背負ってきた人物や、ランスに振り回されてきた人物がいる。敵味方の人数が多いのに、全員を同じ調子の応援役へまとめない。それぞれが自国、仲間、個人的な因縁を持って最終戦へ入る。過去作を知っているほど、短い再会や何気ない会話の重さは増す。第1作からすべて遊んでいなければ理解できない、というほど閉じた作りではないが、完結編から入るのは勧めにくい。人物紹介だけでは、ランスが誰に何をしてきたか、なぜ周囲が彼を見捨てずにいるのかまでは埋まらない。時間をかけてシリーズを追った人への返答が、本作の大きな部分を占める。一方、長年のファン向けだから許されている雑さもある。登場人物が多く、好きな人物の出番が期待より短いこともある。戦争の規模に対して、一つひとつの出来事を同じ深さでは描けない。ランダムなカード入手によって、見たいエピソードへ届きにくい場合もある。すべての過去を公平に回収する作品ではなく、巨大な戦況の中で会えた人を拾っていく作品だ。成人向け要素については、作品の個性という便利な言葉で済ませたくない。ランスの行動や世界の倫理観に強い拒否感を持つのは自然で、物語の規模やゲーム性がその不快さを帳消しにするわけではない。Oregeの100点は、誰にでも同じ価値があるという採点ではなく、このシリーズと表現を受け入れられるプレイヤーにとっての評価だ。購入前に内容を確認し、自分に合わないなら避ける判断をしてほしい。
それでも表現を無害に置き換えれば同じ作品になるかというと、そうではない。ランスの身勝手さと、彼が結果として動かしてしまう世界の落差が、シリーズの笑いと残酷さを作ってきた。最終作だけ主人公を模範的な英雄に直せば、30年描いた人物を別人にして終えることになる。本作は好かれやすい結論へ逃げず、最後までランスをランスとして扱う。その判断は、評価と賛同を分けて考える必要がある。生きているうちに、これほどの完成度と深い感動をもたらす作品へ再び出会えるのか。そんな不安さえ残る。強い言い方だが、長く遊んできたシリーズの完結編だからこそ生まれる評価だ。完結編は、遊んだ年数まで作品体験へ持ち込む。過去の記憶を持つ人ほど、最後の選択と結末を自分の時間として受け取る。音楽や演出も、その時間を支える。過去を思い出させる場面と、全面戦争の現在を押し出す場面があり、懐かしさだけに寄らない。会話の量は多いが、戦闘と選択が間に入るため、読むだけで終幕へ運ばれる感覚にはなりにくい。ここまで積み上げた物語を、最後までプレイヤーに操作させる。Oregeで『Rance X』を棚へ置く理由は、シリーズの長さそのものを称えるためではない。長く続いた作品ほど、最後は設定の説明とファンサービスに寄りやすい。本作は大戦争RPGという仕組みを作り、過去の国と人物を部隊編成、クエスト選択、周回へ組み込んだ。思い出を見せるのではなく、思い入れのある人物を選ばせる。勧められる相手は限られる。成人向け表現を受け入れられ、過去作を追う時間があり、失敗を次の周回へ持ち越せる人。その条件を越えた先には、他作品で簡単に代用できない終幕がある。30年分の名前を並べて泣かせるのではなく、戦況の中で誰を救い、誰を戦わせるかをプレイヤーに渡す。シリーズを終えることと、一本のゲームとして面白くすることを両方あきらめなかった。その一点が、扱いにくさを承知で100点を付ける理由になっている。