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HALL OF FAME REVIEW

アストロボット(ASTRO BOT)

触っているだけで楽しい。PS5のコントローラーまで遊びに変えた、Team ASOBIの3Dアクション


アストロボット(ASTRO BOT) のパッケージ
Orege 100
METASCORE
94
IGN
9
発売日
2024年9月6日(金)
ジャンル
3Dアクション
対応機種
PlayStation 5

『アストロボット』をOregeの100点に置いた理由は、遊び始めて数分で説明できる。アストロを歩かせ、跳ばせ、地面を殴る。その一つひとつに小さな反応が返ってきて、次は何に触れようかと思わせる。大きな物語や複雑な成長要素を理解する前に、操作そのものが楽しい。3Dアクションにとって基本中の基本だが、ここまで丁寧に揃った作品は多くない。PS5の母船が襲われ、銀河に散った仲間のボットを救い出す。設定は簡潔で、会話を読まなくても目的を見失わない。公式情報では50を超える惑星に300体のボットが配置され、そのうち150体以上はPlayStationに関わるキャラクターを思わせるVIPボットだ。数字だけを見ると収集ゲームに見えるが、実際の中心は集めた数ではない。救出までの短い道筋に、毎回ちがう触り心地が用意されている。砂浜、密林、火山といった舞台は、背景を替えただけでは終わらない。水面を滑る感覚、草をかき分ける音、足場が崩れる予兆まで、画面と手元の反応が結びついている。DualSenseの振動は派手な場面だけで強く震える装置ではなく、足元の材質や周囲の出来事を伝えるもう一つの表示になっている。アダプティブトリガーも同じで、押し込みの重さが行動の意味を補う。コントローラーの機能紹介をステージの外から見せるのではなく、遊びの中に溶かしている。能力の出し方もうまい。長い腕で登るモンキー・クライマー、直線的に飛び込むブルドッグブースター、離れた場所を殴れるツインフロッググローブなど、説明を読まなくても一度動かせば役割が分かる。しかも、一つの能力を覚えたからといって延々と使わせない。面白さが薄まる少し前に区切りをつけ、次の惑星では別の仕掛けを渡してくる。せっかく作った機能を長く使わせたくなるのが普通なのに、本作は出し惜しみをしない。

この判断が、全体のテンポを作っている。短い助走から新しい仕掛けに触れ、少し応用したところで見せ場が来る。脇道には助けを待つボットやパズルピースがいるが、寄り道は数分で本線へ戻れる範囲に収まる。探索好きには見つける楽しみがあり、先へ進みたい人には過度な足止めがない。収集率を埋める作業と、初見の驚きが喧嘩していない。アストロの操作も、このテンポを壊さないように絞られている。移動、ジャンプ、パンチを軸にして、空中での滞在や攻撃を兼ねる動きが加わる。ボタンの組み合わせを覚えるより、足場との距離を見ることに意識を使える。失敗しても復帰が早く、もう一度試すまでの待ち時間が短い。難しいステージではきちんと精度を要求されるが、再挑戦の軽さがあるため、失敗の印象より攻略の手応えが残る。やさしそうな見た目だけで判断すると、本作の幅を見落とす。通常の惑星は初めて3Dアクションに触れる人でも進みやすい一方、寄り道にはタイミングを詰めるステージがある。どこまで挑むかはプレイヤーが決められる。本編の流れを止めず、腕を試したい人の場所を別に用意する構成は、家族で遊ぶゲームとしても都合がいい。難易度を一つの線に押し込まず、入口の広さと奥の歯応えを両立している。PlayStation作品のカメオは、本作を語るときに避けられない。ただし、知っているキャラクターを見つけて喜ぶだけの展示ではない。救出したVIPボットは拠点に集まり、ガチャラボで対応するアイテムを手に入れると、その作品を思わせる仕草を見せる。元ネタを知っていれば細かな動きに笑えるし、知らなくても変わった仲間として眺められる。過去作への敬意が、予備知識の試験になっていない。

むしろ重要なのは、カメオがなくてもステージが成立していることだ。特定作品を題材にした場面では、原作の道具や感覚をアストロの簡単な操作へ置き換える。再現度を競うのではなく、「この作品なら何を動かすと楽しいか」を抜き出す。そのため元ネタを知らないプレイヤーにも新しい遊びとして通じる。PlayStationの30年を振り返りながら、過去の記憶だけに寄りかからない作りになっている。見た目の密度にも同じ姿勢がある。画面には大量の小物やボットが動いているが、進む方向や危険な場所は読み取りやすい。壊せる物、飛び移れる足場、触れると反応する背景が整理され、賑やかさが操作の邪魔をしない。アストロのアニメーションは失敗したときまで愛嬌があり、助けたボットも短い動きで性格を見せる。説明文ではなく、動きに情報を持たせている。音の働きも大きい。明るい曲調が場面の勢いを作る一方、効果音は物に触れた結果を細かく返す。テレビのスピーカー、コントローラーの振動、手元から聞こえる音がまとまって、一つの行動を少し大げさに祝ってくれる。コインを拾う、仕掛けを動かす、ボットを救うといった小さな達成が気持ちよく区切られるので、目的地までの移動が空白にならない。会話に頼らない作りは、アクセシビリティの面でも本作らしい。公式ページでは音声による会話がなく、字幕なしで遊べることが示されている。振動やアダプティブトリガーも無効にできる。DualSenseの表現は魅力の一部だが、それを使えない人を入り口で拒まない。誰にでも同じ遊び方を求めるのではなく、核になる操作を保ったまま感覚の受け取り方を選べる。拠点の墜落現場は、進行度を示すメニューの代わりにもなっている。仲間が増えると、ボットたちの力を借りて新しい場所へ届くようになる。数字の条件を満たして扉を開けるだけの仕組みでも、集めた相手が画面に集まって手を貸すと意味が変わる。収集物が一覧表のチェックから、旅の仲間へ戻ってくる。この小さな演出が、救出を続ける動機を支えている。

ASTRO BOTのゲーム画面。救出したボットたちが壁のようにつながり、アストロの移動を助けている。
救出したボットがつながり、アストロが移動するための壁になる場面。集めた仲間が数の条件だけでなく、届かなかった場所へ進む手段として画面に戻ってくる。画面引用 / 出典: PlayStation.Blog/Team ASOBI公式記事(PS5版) / ©2024 Sony Interactive Entertainment Inc. Developed by Team Asobi.

物語を重視する人には、筋書きが薄く感じられるかもしれない。複雑な人物関係や長い会話で引っ張る作品ではなく、アストロ自身も台詞で内面を語らない。けれど、この簡潔さは欠点を隠した結果ではない。誰かを助けるたびに拠点が賑やかになり、壊れた母船を直す旅が目で分かる。感情の説明を増やさず、プレイヤーが行ったことを景色の変化で返している。また、PlayStationへの思い入れが強いほど楽しみが増える一方で、知らないキャラクターが続く場面は温度差が出る。それでも、本作は懐かしさを100点の根拠にはしていない。走る、跳ぶ、見つけるという行為が先にあり、その上に歴史のお祝いが乗っている。思い出の補正を外しても、3Dアクションとしての手触りとテンポが残る。Team ASOBIは『ASTRO’s PLAYROOM』でPS5の機能を遊びに変えていた。本作は公式に、その約4倍のボリュームを持つフルサイズ作品と案内されている。規模が大きくなっても、短い驚きを重ねる設計は薄まらなかった。むしろ、能力や惑星を次々と切り替えることで、長さを反復ではなく種類へ変えている。技術デモから製品版へ大きくしたというより、あの密度を一本の冒険として並べ直した作品だ。Oregeがこのゲームに100点を付けるのは、欠点が一つもないという意味ではない。3Dアクションが苦手なら精密な足場で苦戦するし、重い物語を求める人には軽すぎる。それでも、コントローラーを握った瞬間から最後まで、ゲームを動かす喜びが途切れにくい。高性能なハードを説明するのではなく、その性能で手触りのいい遊びを作る。PS5を持っているなら、まずアストロを数歩歩かせてみてほしい。その数歩に、本作を棚へ置く理由がほとんど入っている。